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自律走行ロボットのために深層学習による物体認識

はじめに

 本章では,初めに研修背景としてつくばチャレンジという実験走行会について記 述した後,それを踏まえて研究目的について説明する.

つくばチャレンジ

 人間と共存するロボットの技術開発及び発展の為に,様々な大学や企業によりつくば市で行われている公開実験として「つくばチャレンジ」という実験走行会がある.  つくばチャレンジは「人間とロボットが共存する社会の実現」ということを目的とした自律走行ロボットの技術開発及び発展のための複数による公開実験であり,参加者各々が自律走行できるロボットを試作してつくば市内において実験を行い,様々な方式を試した後にその方法や結果を共有することで,技術者達の交流とそれによるロボットの技術レベルを向上させることを目的としている.昨年行われたつくばチャレンジ2018は,ロボットに自律走行させることで,つくば市役所の構内から始まる横断歩道や信号を渡り,近くの公園へ行ってその公園内の決められたスポットを回るコースを走行させたり,途中のエリアにおいて特定の服装の人間を探索し発見するという課題の達成を目指すものであった. 以下の図1.1につくばチャレンジ2018のコースを示す.

つくばチャレンジのロボットにおける移動補助のための物体検出

 つくばチャレンジのロボットは自律走行であるため,予め設計されたプログラムに基づいて走行している.そのため,予めどのような状況があり,またその場合にどのような行動をするなどと言ったことが想定されプログラムとして組み込まれている場合が多い.例としては,ロボットの進行上に人やモノなどの障害物があった場合や,信号や横断歩道などがあった場合などである.  しかしながら,ロボットはそのままだと物体の種類の分別はおろか,物体と非物体の区別すら付けられないため,物体に対してどのように対処するかを決めるプログラムだけでは行動できない.そのため,ロボットが物体を認識できるように,物体検出のプログラムを組み込む必要がある.  これには先行研究が多くある.何故ならば,一つのプログラムにおいて原則1つの物体を検出しているため,走行中様々な状況が想定されるロボットの自律走行においては多種多様な物体の検出が必要になるからである.  例を2つほど上げよう.  先ず一つ目としては,参考文献 [1] の信号検出手法の研究である.この研究ではつくばチャレンジにおけるロボットの自律走行時に歩行者用信号付きの横断歩道を渡ることがありうるため,歩行者用信号を検出し,色により赤信号か青信号かを識別して検出するプログラムを作成している.コストが軽く検出率も90%近くではあったが,逆光が差し込んでいたり,秋口のために紅葉した落ち葉があったりした場合など環境が少し変わると未検出及び誤検出となっていた.  二つ目としては,参考文献 [2] の特定人物検出手法の研究である.この研究ではつくばチャレンジにおける課題の一つである人物探索及び検出を達成するために,探索対象となる人物の横においてある看板を検出することで擬似的に人を検出しようとしている.手法としては,板の反射強度の違いを用いて,3次元レーザ測域センサを照射し反射させ一定以上の閾値の反射光をクラスタリングすることで,看板の反射強度と同じ物体を看板と考え,検出している.これならば天候や気候の条件や人の顔などに関係なく,人物検出をできているように見える.しかしこれは看板の材質などが予めわかっている必要がある上に,人物検出ではなく看板検出である為,つくばチャレンジの趣旨とは少し異なっている.  これらに共通する利点としては,シンプルなため比較的コストが軽く,どのようなスペックの計算機でも大して負荷をかけずに高速で運用できる点である.しかし,1つ目の研究においては信号,2つ目の研究においては特定人物といったように特定の物体のみしか検出できず,汎用性に乏しい.もしこれらの研究を元にして他物体を検出しようとするならば,プログラムと値の調整をこなさなければならないし,2つ目に至っては検出する際の状況から近くにある特徴的な反射率を持つ物体を予測し,その反射率を測定することをしなければならないだろう.これでは,いくら軽いとはいっても自律走行のためには多くのプログラムや数値調整のためのコストが必要となる.  一方で,コストこそかかるが実際の大会等で他の既存手法をことごとく上回り検 出率が一位となったアルゴリズムなどの総称を , 深層学習という . 深層学習は画像 のラベリングによりアノテーションをかけたり , 学習や検出をする際にコストがか かるだけで , 検出の際も高精度かつ比較的速度が速く行うことができる . そこで 私は , 今流行りの深層学習を用いて物体検出を行えば , 汎用性が精度も高い水準で 検出が行えるのではないかと思い , 深層学習を用いた物体検出の手法を模索した .


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