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本研究は屋外環境において、決められた経路を目的地まで走行する、自律走行ロボットのナビゲーションに関するものである。
ロボットナビゲーションにはGPS,LRFなど様々なセンサが使用されるが、他のセンサより比較的安価に用意できるなどの利点が存在することから、本研究ではカメラによる画像処理を用いたナビゲーションについて議論する。
画像処理を用いたナビゲーションで有望な方法としては、風景マッチングによる自己位置推定法が存在する。これは、風景中の特徴的な部分を抽出して、あらかじめ用意したデータと照合し、ロボット位置の推定を行なう方法である。
しかし、屋外の環境は色々と異なるため、照合に利用できるような特徴が少なく、風景マッチングが難しい場所も存在する。そのような場合に風景マッチングの代わりに利用できる方法として、本研究では路面パターンを用いた自己位置推定法を考案した。
また、風景マッチング、路面パターンを用いる方法のいずれも難しい場合も存在する。そのような場合には最低限ナビゲーションに必要となる、ロボットの進行すべき方向の情報を得るための方法として、画像直線を用いた進行方向算出法を考案した。
以上2つの処理について考案し、実験を行なってその有効性を確認した。
本研究で提案する画像処理は次の2つである。
風景マッチングは有望な方法であるが、場所によっては風景中に照合に利用できるような特徴が少ない場合もある。そのような場所で代わりに利用できる方法を提案する。
この処理では、走行時に得られる画像に対して射影変換、コントラスト強調の処理を行ない、画像中の路面模様の特徴を抽出できる形に変換する。
上の図が走行時に取得できる画像、下の図が変換結果である。
その後、抽出した模様パターンの特徴と前もって用意した見本データの特徴を照合する。つまり、風景の特徴の代わりに路面の特徴を用いるわけである。
図の上が前もって用意した見本データであり、下の図が走行時取得画像の変換結果である。白い枠で表示された部分に見本データを発見したことを示している。
見本データはそれを用意した位置の情報とセットになっており、照合処理の結果計算されたパターン位置のずれから、ロボットの現在位置を計算することができる。
風景の特徴が少なく、更にアスファルト面など路面模様がないため、前述の提案手法を使用できないところもある。そのようなところで、最低限ナビゲーションに必要となる、ロボットの進むべき方向を求める方法として、画像直線を用いる方法を提案する。
この処理では走行中に得られた画像に対して直線検出の処理を行ない、得られた直線が収束する点(消失点) を計算して、ロボットの進行方向を算出する。
上の図が走行時に取得できる画像、下の図が消失点計算の結果である。
発見した消失点が青の円で示され、その点に向かう線が青い線で示されている。また、垂直な線が建物などでよく検出されるが、計算する消失点の位置がずれてしまうことがあるため、この処理においては無視している。
提案する処理の有効性を確認すべく、ロボットを画像処理によるナビゲーションで自律走行させる実験を行なった。
使用ロボットを以下に示す。
走行コースを以下に示す。
このコースを前もって手動走行することによりデータ収集し、得られたデータを用いて本走行を行なった。
図中A 地点がスタート地点であり、C 地点がゴール地点である。
このコースは風景の特徴が少ないわけではないが、風景マッチングを使わず提案方法のみで走行することでこれらの方法が実用に足るかを確認した。
図中A~B の前半部分では路面パターンを用いた方法によって走行し、途中で使用処理を切り替え、B~C の後半部分では画像直線を用いた方法によって走行した。
結果、ゴールのC 地点まで到達することに成功した。
路面パターンを用いた手法の結果例を以下に示す。
上の図が走行中に取得した画像であり、下の図が見本画像と照合した結果である。
画像直線を用いた手法の結果例を以下に示す。
上の図が走行中に取得した画像、下の図が消失点計算の結果である。
特徴が少なく、風景マッチングが困難な場所でも代わりに利用できる画像処理として、路面パターンを用いた自己位置推定法を考案した。また、更に路面模様も少ない場所では、最低限ナビゲーションに必要な進行方向を求めるための処理として、画像直線を用いた進行方向算出法を考案した。以上の2 つの処理について、実験によってその実用性を確認した。
路面パターンを使用する方法は、路面の特徴を抽出することによって、人の目では変化がとらえにくい、一面タイル張りのような場所でも見本パターンを識別できることが分かった。画像直線を用いる方法では、横を人が通り過ぎ、検出直線が一部隠れるような場合でも、消失点の計算が可能であり、進行方向を得ることができることが分かった。
今後の課題としては、画像処理のさらなる安定化が挙げられる。また、得られた画像に応じて、最も有効な画像処理をロボット自身で選択できるようになると、様々な状況に対応し、自律走行可能な領域を広げられるのではないかと考えられる。