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光学フィルターを用いた色覚異常者の視認補助手法の研究

始めに

色覚異常者とは

 色覚異常とは、網膜の中で色を感じるL細胞、M細胞、S細胞の3つの色のいずれかの機能が正常でないまたは。機能しないことが原因で、健常者と比べて間隔が正常とは異なるものである。その程度によって色の識別がまったくできないしきもうから識別がしにくい色弱まである。また、色覚異常には先天性と後天性に大きく分けられる。  色覚異常者の割合は、日本では男性の20人に1人、女性の500人に一人、日本全体では320万人以上いるとされている。世界では2億人を超える人数で、これだけの人が一般色覚と色の感じ方が異なる。

色覚異常者が抱える問題

 そんな奈か、近年では色覚異常者に対して配慮の動きが見られる。例えば、交通信号や標識のいろが見分けがつかなかったのが見やすい色に変わっている。さらにはソーシャルゲームに色覚異常者の配慮がなされている。

研究目的

 これらの背景により、色覚異常発生頻度の大半を占める大1誌起毛、大2誌起毛が日常生活で気軽に利用できるフィルターを作成する事は必要だと言える。本件旧では実用の前段階として色覚検査表である石原表から大1誌起毛、大2誌起毛の色覚異常者が視認しにくい色をサンプルとして抽出し、提案フィルターの有用性を検証する。

提案フィルター

 第1色盲、第2色盲は赤系統、緑系統の色の判断が付きにくい共通点から、赤系統と緑系統の差が認知できるフィルターを提案する。提案フィルターとしては赤系統のみの透過率が低いシアンフィルター、緑系統のみの透過率が低いマゼンタフィルターを組み合わせる事により明暗ができる。これによって赤系統、緑系統の色を区別をできる手法となっている。  提案フィルターを以下に示す。

 フィルターは図にあるとおり内側にはマゼンタ、外側にはシアン、周りに黒を塗る。2重円にしている理由は内側がマゼンタ、外側がシアンとすることにより誤認を防ぐためである.周りが黒なのは比べる色の先入観をなくすためである.

実験

石原表について

 石原表は色覚検査の代表的な手法の1つとして用いられている。使用方法は、本またはカードになっている表を被験者の視線に対して垂直に75cmほどの距離に示し、数字表の場合は書かれている数字を読み取らせる。また色覚のタイプにより異なった応答ができ、被験者の症状が判別ができる。色覚異常者を判別できる理由は下図を例とすると

 石原表は赤と緑の斑点模様から構成されており、健常者は赤と緑の区別がつき、数字が浮き出て見え任地ができる。対して第1色盲第2色盲は赤系統、緑系統の判別が難しいため数字が浮き出て見えず認知ができない。

実験方法

 上の石原表に提案フィルターを重ね、スキャンを行いマゼンタフィルター、シアンフィルターンにかかった部分のRGBと明暗を見比べる。

結果

 実験によって得られた結果画像とマゼンタフィルター、シアンフィルター、フィルターをかけなかった場合の赤系統(redsample)、緑系統(greensample)の正常色覚、第1色盲、第2色盲のRGBの値をそれぞれ示す。

考察

 RGBの値から見ると、マゼンタフィルターをかけた時のredsample,greensample双方の 画素値Gの値が下がっていて理論通りである。シアンフィルターをかけた時も第2色盲の画素値Gを除いては同様にredsample,greensample双方の画素値Rの値が下がっていて理論どおりである。  次に画像からの結果であるが、正常色覚、第1色盲、第2色盲共通して言える事は内側のマゼンタフィルターはredsampleとgreensampleの明暗がはっきりと分かれており、外側のシアンフィルターはredsampleとgreensampleの明暗がわかりにくく、期待していた結果とは異なった。  シアンフィルターがうまくいかなかった理由として、緑サンプルの画素値Gの値が低かった事が挙げられる。RGBの結果、からわかるとおり、シアンフィルターは画素値Rの値が減少している事がわかるが、このことがgreensampleとredsampleの画素値Rの差を縮めてしまい判別を難しくしている事がわかる。シアンフィルター、マゼンタフィルターも結果の通りとなったが、色覚異常者のためのフィルターはマゼンタフィルターの方が色覚異常者のためのフィルターとしては有用である事が言える。

参考文献

[1] 色弱について-NPO法人カラーユニバーサルデザイン機構/色弱・色盲相談窓口/特定非営利活動法人Color Universal Design Organization, "http://www.cudo.jp/colorud/color_vision/color_weekness" [2] 栗田正樹,『20人にひとりの遺伝子色弱の子を持つすべての人へ』,北海道新聞社,157pp. [3] 伊賀公一,『色弱が世界を帰る』,太田出版,289pp. [4] 橋本尚孝,“負判別をテクスチャによって表現する色覚異常者のための画像処理”,群馬大学工学部情報工学科卒業論文,2012.
[5] 『医学博士 石原忍 考案 学校用 色覚検査表』,株式会社 半田屋商店


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