コンピュータグラフィクスによって3 次元物体を画像化する場合, 視点を設定する必要がある. どの位置に視点を設定するかによって, 生成画像に対し物体の視認性に大きく影響を及ぼすこととなる.
そのため, コンピュータグラフィクスによる視点の設定は重要な選択であるといえる. また,3 次元物体の情報を正しく認識するためには画像化された物体の形状特徴を最も良く視認できる視点の位置を選択する必要が求められる.
画像化された物体の形状特徴を最も良く視認できる, 分かりやすい視点の位置を本研究では最適視点位置という言葉を用いて定義する. 最適視点位置を選択する際, 人による手動での選択は有効な視点の判別がつかない上に, 労力や時間がかかるなどといった問題がある. この問題に対し, コンピュータによる自動計算を用いることで, 最適視点位置を決定する手法の研究が行われている.
本研究ではまず, 自動計算を行う既存手法の検証を行う.
次に, 手法における視点の評価が実際に人の感覚による視点の評価とどの程度一致する結果が得られるかを視覚実験を行い検証する.
既存手法では, 視点の評価方法として画像化された3 次元物体を構成する各部分の画像上に投影される面積分布から計算されるエントロピーを使用し, 数値的に評価をすることで視点の評価を行う. 本研究では既存手法で用いる3 次元物体を三角形によって構成された3D mesh bunny を用いることとする.
既存手法による視点の評価方法は実際に人の視認による評価に対して, 良い評価ができるのだろうか. 既存手法による視点の評価結果と人の視認による視点の評価がどの程度一致するか, 既存手法の視点評価基準の有効性に対して統計による調査を用いた視覚実験を行い既存手法の評価方法について述べる.
統計結果を折れ線グラフにまとめたものを下記に示す.
まず, すべてのパターン別に平均順位とグループ順位との類似度を見てみる. 平均順位は実際の値であるグループ順位に完全に一致しているパターンはひとつも見られなかった.
しかし,average(全パターンをさらに平均したもの)では平均順位としてはグループ順位と一致するという結果が得られた. この結果から, エントロピーの値が高ければ良い視点であるといえる.
次にグループ1 の各パターンでの平均順位に着目する. グループ1 から抽出された視点からの画像は5 種類のパターン全てにおいて平均順位が1 位という結果が得られた. また, 平均順位2 位との差がどのパターンにおいてもとれていることから安定して高い評価を得ることができた.
グループ1(エントロピー値が高く, 最適視点位置に近い視点)の人の視認による評価
結果から, グループ1 が人の視認による評価に対して最も良い視点のグループであるこ
とがいえる.
この2 つの結果から, エントロピー値が最大となる視点の位置が最適視点位置であるといった既存手法の評価方法が, 人の視認による視点の評価に対しても有効性のある評価方法であることがいえる.
本研究ではコンピュータグラフィクスにおける最適視点位置の自動計算を行う手法の検証に始まり, 既存手法によって得られた結果が実際には人の視認による評価でどのような結果が得られるか, 統計調査による視覚実験を行うことで評価を行った.
統計調査の結果から, 最適視点位置を自動計算によって選択する既存手法の視点の評価は, 人からの良い視点の評価に対して有効であることを確認した.
[1] Francisco Gonzalez,Mateu Sbert,and Miquel,2008,"Viewpoint-Based Ambient Occlusion",Published by the IEEE Computer Society,pp.44-51.
[2] 三浦憲二郎,2000,"OpenGL 3D グラフィックス入門 [第2 版]",株式会社 朝倉 書店,pp. 187.
[3] "OpenGL",http://www.opengl.org/ .
[4] "CGAL Computational Geometry Algorithms Library",https://www.cgal.org/ .
[5] 床井浩平,"GLUT による「手抜き」OpenGL 入門",http://www.wakayama-u.ac.jp/ tokoi/opengl/libglut.html .