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小惑星画像からの形状復元手法に適した特徴点検出手法

はじめに

 小惑星探査において、小惑星探査機がサンプルを回収のために小惑星にタッチダウンしなければならないが、その際に小惑星の形状情報が必要となる。形状情報を取得する方法としては搭載のレーザーセンサによって取得する方法があるが、画像からも取得可能である。画像から形状を復元する際に画像上の特徴点の対応付けを行うが、既存の特徴量であるSIFTなどは人間が判断のしにくい特徴点も多く検出してしまう。小惑星探査は高い精度が要求される場面もあるため人間の手による修正が必要になったとき、分かりにくい特徴点だと作業が困難になってしまう。そこで本研究では学習ベースの手法として主成分分析を用いることで小惑星に適した特徴を検出する手法を提案する。

主成分分析を用いた特徴検出手法

主成分分析

 主成分分析(Principal Component Analysis)とは多変量解析の1つで、多数のデータからそのデータにおける特性を要約し簡潔に表現する方法である。例えば、データとして説明変数$x_1,x_2,...,x_p$があったとき、これを$a_1x_1+a_2x_2+,...+a_px_p$と表現したとする。このように複数の変数の1次式として表現したものを主成分という。主成分は複数存在し、データの特性を一番表現するものを第1主成分とし、第2主成分、第3主成分といったように続いていく。こういったデータの特性を表す主成分を用いることで小惑星画像における特徴的な部分の抽出が可能であると考えられる。

提案手法

 主成分分析を用いることによってクレーター画像の特性を求め、それを利用することで適切な特徴を検出することができると考えられる、本節では主成分分析を用いた特徴検出手法の詳細を述べる。

主成分分析に用いるデータセット

 ここでは主成分分析を行うデータセットについて述べる。

 まず今回の実験では、JAXAからいただいた小惑星模型の画像群を使用する。これは小惑星模型を周囲から5°区切りで撮影した合計72枚の画像である。

image000.png
図1: 小惑星模型画像の例

主成分分析を行いたいデータというのは、その特性を抽出したいデータ、つまり小惑星画像において人間が特徴的だと判断できる部分を集めたものでなければならない。本研究では以下に示すような小惑星画像内のクレーターや岩、その他凹凸を特徴的な部分としている。

samples.png
図2: データセットに用いるサンプル画像の例

サンプル画像は上で示したような20×20ピクセルのグレースケール画像としている。また、小惑星模型画像内の特徴がある程度収まる範囲として20×20ピクセルが適切であったため、今回はこの範囲での画像とした。こういった画像を72枚の様々な角度から撮影した小惑星模型画像群から400枚収集を行う。

主成分分析を用いた特徴検出方法

最初に本手法の大まかな流れを示す。その後、各手順についての詳細を述べる。

1.データセットに対し主成分分析を行い、固有値及び固有ベクトル(主成分)を求める。

2.入力画像から20×20ピクセルで切り出した画像と1で求めた各主成分との内積を計算する。

3.計算結果に対し各固有値による重みづけをして値の調整を行い、類似度を決定する。

4.手順2, 3を入力画像の左上から切り出す位置を1画素ずつ移動させながら、入力画像全体において行い、各座標での特徴に対する類似度を求める。

 手順1について、データセットは400次元のベクトル400個から構成されているので、その共分散行列は400×400の行列となる。この共分散行列を用いて、固有値及び固有ベクトルを計算する。ここで求められる固有値・固有ベクトルの個数(主成分数)は400次元であるので400個である。次に実験に使用する主成分を選択する。計算された固有値の中で一番値の大きいものから第1主成分、続いて第2主成分といったように対応しているので、固有値の上位のものとそれに対応している固有ベクトルを使用すればよい。主成分数の選択は、寄与率というその主成分が全体の何%の情報を保有しているかを表す指標をもとに決定する。そのため固有値の大きい第1主成分の寄与率は高くなる。また、この割合を第1主成分から順に加算していったものを累積寄与率といい、一般的にはこれが70~80%以上になるような主成分数を採用する。詳しい説明は第3章で述べるが、今回の手法で採用した主成分は3つである。

続いて手順2について、入力画像(ここでいう入力画像とは前述した72枚の小惑星模型画像のうちの1枚)から20×20ピクセルの範囲で切り出した画像(以降小画像)と採用した3つの固有ベクトルを用いて類似度を計算する。切り出す位置については後述する。類似度を求めるには、小画像と固有ベクトルとの内積をとることによってそれぞれの主成分方向への反応の大きさを知ることができる。

手順3について、手順2で計算した各主成分ごとの内積の値に対して固有値を用いた重みづけを行う。第1主成分の値が最も大きく、第2主成分、第3主成分と順に重みが小さくなっていくように計算を行う。手順2での計算を含めた類似度sの算出式を以下に示す。viを各固有ベクトル、xを小画像のベクトル、λiを固有値とする。

類似度 s = Σ[i=0→3]{λi(vi・x)^2}/||x||^2

これを行うことによって、より第1主成分の反応を強調でき、相対的に第3主成分の反応を抑制することができる。また、統計的な変動に対応することもできる。第3章にて実験の結果とともに詳細を述べる。

手順4について、手順2での小画像切り出しを入力画像の左上の座標から始める。このとき小画像の左上角の座標を基準座標とする。手順3を終えた後、切り出す画像の基準座標を1ずらし同じく手順2、3を繰り返す。これを入力画像全体に行うことでそれぞれの基準座標での類似度が求められる。

評価実験

評価方法

はじめに実験にて使用する画像について述べる。また、前章で述べた手法による特徴検出は結果として類似度を求めることができるが、類似度が大きかった位置が本当にクレーターと思われる特徴なのかというのを確かめなければならない。そこで評価の指標として正解データを作成し、それを比較の際の指標とする。

実験に使用する画像

実験に使用した画像はできる限りいろいろなパターンを含んだ見た目の違う画像を使用した方が良いと考えたため、前述した小惑星模型画像72枚の内、30°区切りで撮影した画像の計12枚を使用する。

image_example.png
図3: 実験に使用した小惑星模型画像の例

正解データの作成

本研究での特徴検出の結果を評価するためには、人間が目で見て特徴だと判断したデータが必要になる。そのため小惑星模型画像において目で見て特徴だと判断した場所に20×20ピクセルの範囲で位置を記録した正解データを作成した。このデータは画像上での座標が記録されているデータであり、座標は前章で述べた20×20ピクセルの基準座標における座標である。こういったデータを0°、30°とそれぞれの撮影角度の画像計12枚において作成した。以下にそのデータをもとに小惑星模型画像に位置を描画した画像を示す。

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図4: 正解データを描画した画像の例

正解データを用いた評価

主成分分析を用いた特徴検出結果

主成分数と固有値による重みづけ

特徴検出の正解率の結果

SIFTを用いたキーポイント検出結果との比較

SIFTのパラメータ

SIFTキーポイントの評価方法

提案手法とSIFTを用いたキーポイント検出の結果

考察

提案手法による実験の結果について

SIFTとの比較結果について

まとめ

参考文献


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