私が所属する太田研究室は,自律走行ロボットの公開実験会「つくばチャレンジ」に参加している.「つくばチャレンジ」とは実環境におけるロボットの自律走行技術の進歩を目的として,つくば市内の市街地でロボットが自律走行する公開実験会である[1]. 実環境とは歩道や公園といった人々が普段使っている環境のことである.つくばチャレンジでは様々な課題が課せられている.課題には必須課題と選択課題が存在し,必須課題では指定されたコースを自律走行で完走する.私の研究では選択課題の1つ,「経路封鎖迂回」を担当した. この課題は「つくばチャレンジ」から指定されているルート上にある公園内の遊歩道上に「経路封鎖看板」というものが置かれており,自律走行中のロボットがこの看板と出会った際にこの看板がある道は迂回し,他の道へ行くという課題だ.図1に公園の地図,図2に経路上に設置されている経路封鎖看板の様子を表示する.
この課題達成のためにはロボットが看板がある道を通らないようにする必要がある.しかし,この図2が置かれる位置は事前に知らされておらず毎回公園内に位置,個数ともにランダムで置かれている.したがってロボット自身が自律走行中に看板をその場で検知する必要がある.
選択課題である経路封鎖迂回を達成するためには自律走行中にロボット自身が自動で看板を検出する必要がある.すなわちロボットに搭載されている機器のみで検出する必要があるということだ.そこから検出に使用する機器としてはロボットに搭載されているカメラが妥当だと考えた.ここで私達が使用した自律走行ロボットについて説明する.太田研究室では毎年, 株式会社リバスト社様から「Mercury(AcademicModel)」という自律走行ロボットをお借りして参加している.図3にこのロボットの外観をしめす.
経路封鎖看板には色や形などを使った視覚的特徴が複数ある.図4に経路封鎖看板をしめす.
本研究では,経路封鎖看板検出にある3つの特徴に注目した.1つ目は看板中央にある赤い円, 2つ目は背景の白い四角, 3つ目は左上の黒のTの文字である.これらの特徴を2通りに組み合わせて看板検出を行った.これらの特徴を2通りに組み合わせて看板検出を行った.次にこの2通りの組み合わせをAパターン,Bパターンとして注目した特徴と検出方法について説明する.
楕円フィティングにより赤い円の検出を行った理由としてはカメラが常に動いているためである. 経路封鎖看板を正面から見ると赤い円は正円に見える. しかし,経路封鎖看板を撮影するときロボットは自律走行中である. そのため常に正面から撮影を行うことが出来るとは断定できず,斜めなどからの撮影も可能性として存在する. そのような場合では赤い円が楕円のように映る可能性もあるため楕円での検出を行った. 次に,原画像全体に赤い円検出によって得られた座標を中心とした一定領域を切り出す. 図6に緑の矩形で赤い円を中心として定めた一定領域を示す.
この一定領域はこのあと背景の白い四角を検出する際に用いるため経路封鎖看板全体が入る大きさになっている. この大きさを定めるためにそれぞれの楕円の大きさを用いた. 図5を見ると2重丸を描くように楕円が検出されていることがわかる. この楕円の大きさと位置関係を用いて一定領域を定めたため,一定領域も2重線を描くよう定められた. そして次に背景の白い四角を検出する. 先程切り抜いた一定領域に対して設定した閾値内の白色抽出を行う. その後この白色抽出画像から輪郭を取得する. 図7-10に白色抽出を行った様子を示す. 赤い線で描かれているところが白色抽出後に取得した輪郭になる.