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テンプレートマッチング法のパターンの変形に対する耐性の評価

テンプレートマッチングとは

テンプレートマッチングとは、入力画像の中からテンプレートに似た画像パターンを探し出す手法で、どれだけ似ているかをスコア(数値)で表す。また、探す方法にはさまざまなものがある。

テンプレートマッチング.jpg
図1:テンプレートマッチング法のイメージ図

研究目的

テンプレートマッチング法を用いる際に、探す画像パターンに変化が生じていた場合、どの程度の変化なら許容されるか、またどの方法が最も耐性があるのかがこれまではわからなかった。そこで本研究では、探す画像パターンに倍率・回転の変化があったとき、どの方法が耐性があるのかを実験を通して評価した。

評価するマッチング方法

評価を行ったマッチング法は以下のものである。

評価に使用する画像

 評価を行うために、以下のような背景画像6枚とテンプレート7枚を使用した。

実験画像1.jpg
図2:背景画像
実験画像2.jpg
図3:テンプレート

ただし、背景画像とテンプレートはまったく関係のない画像である。

評価方法

評価の全体の流れ

まず、背景画像とテンプレートでテンプレートマッチングを行い、正しくマッチングできたかどうかを判定する値(判定値)を求める。次にテンプレートと、テンプレートを変化させた画像でテンプレートマッチングを行い、テンプレートの変化に伴うスコアの変化を調べる。そして求めた判定値と比較し、正しくマッチングできる変化の範囲(許容範囲)を調べる。求めた許容範囲を各マッチング法で比較し、評価する。

チャート.jpg
図4:評価の全体の流れ図

判定値の求め方

背景画像とテンプレートでテンプレートマッチングを行うと、テンプレートに似ている画像パターンがない場合のスコア(これをaとする)が得られる。また、テンプレートとテンプレートを変化させたものでテンプレートマッチングを行ったとき、テンプレートの変化につれてスコア(これをbとする)は悪くなっていく。このとき、b > aである間は正しくマッチングできると判断できるので、背景画像とテンプレートでテンプレートマッチングを行い、結果のスコアを判定値として使うことにした。判定値の求め方は以下のとおりになる。

判定値.jpg
図5:判定値の求め方

テンプレートを変化させた画像の準備

許容範囲を求めるには、テンプレートの倍率を変化させたり回転の変化を行ったものが必要である。そこで、倍率の変化については80%~120%(2%刻み)の倍率変化を行ったものを用意し、回転の変化については、0°~20°(2°刻み)の回転を行ったものを用意する。

ノイズを付加した画像の準備

先ほど作成した画像はノイズがない画像であり、ノイズを付加して現実的な状況での結果も知りたいと考えた。そこで、先ほど作成した画像に平均0標準偏差2のガウスノイズ、平均0標準偏差8のガウスノイズ、平均0標準偏差32のガウスノイズを付加したものを用意し、ノイズを付加した場合の結果も調べることにした。

許容範囲の求め方

倍率の変化における許容範囲の求め方も回転の変化における許容範囲の求め方も基本的には同じである。ここでは倍率の変化における許容範囲の求め方のみを説明する。

まずテンプレートとテンプレートの倍率を変化させたものでテンプレートマッチングを行い、倍率の変化に伴うスコアの変化を記録する。スコアの変化と判定値を比較し、許容範囲を求める。最後に許容範囲の平均を求め、許容範囲の平均を各マッチング法で比較し、耐性を評価する。

倍率.jpg
図6:倍率の変化における許容範囲の求め方
回転.jpg
図7:回転の変化における許容範囲の求め方

結果

倍率の変化における耐性の評価

以下の図は、どのマッチング法がどの程度の変化まで正しくマッチングできたかを表している。ちなみに、SRFはTPという設定値があるので、TP = 1、10、20、30のときで評価を行った。

ノイズがない場合は、拡大方向はSADが最も許容範囲が広く、ISCが最も許容範囲が狭いことがわかる。縮小方向はSRF TP = 1が最も範囲が広く、SSDが最も範囲が狭いことがわかる。

倍率0-0.jpg
図8:倍率の変化における許容範囲(ノイズがない場合)

平均0標準偏差2のガウスノイズを付加した場合、拡大方向はSADが最も範囲が広く、ISCが最も範囲が狭いことがわかる。縮小方向はNCCとSRF TP = 10が範囲が広く、ISCが最も範囲が狭いことがわかる。

倍率0-2.jpg
図9:倍率の変化における許容範囲(平均0、標準偏差2のガウスノイズを付加した場合)

平均0標準偏差8のガウスノイズを付加した場合、拡大方向はSADが最も範囲が広く、ISCが最も範囲が狭いことがわかる。縮小方向はNCCが最も範囲が広く、ISCが最も範囲が狭いことがわかる。

倍率0-8.jpg
図10:倍率の変化における許容範囲(平均0、標準偏差8のガウスノイズを付加した場合)

平均0標準偏差32のガウスノイズを付加した場合、拡大方向、縮小方向ともにNCCが最も範囲が広く、ISCが最も範囲が狭いことがわかる。

倍率0-32.jpg
図11:倍率の変化における許容範囲(平均0、標準偏差32のガウスノイズを付加した場合)

以上の結果から、倍率の変化に対して耐性があるのはSADとNCC、耐性がないのはISCであることがわかった。

回転の変化における耐性の評価

ノイズがない場合は、SADが最も許容範囲が広く、ISCが最も許容範囲が狭いことがわかる。

回転0-0.jpg
図12:回転の変化における許容範囲(ノイズがない場合)

平均0標準偏差2のガウスノイズを付加した場合も、SADが最も範囲が広く、ISCが最も範囲が狭いことがわかる。

回転0-2.jpg
図13:回転の変化における許容範囲(平均0、標準偏差2のガウスノイズを付加した場合)

平均0標準偏差8のガウスノイズを付加した場合、平均0標準偏差32のガウスノイズを付加した場合も同様の結果となった。

回転0-8.jpg
図14:回転の変化における許容範囲(平均0、標準偏差8のガウスノイズを付加した場合)
回転0-32.jpg
図15:回転の変化における許容範囲(平均0、標準偏差32のガウスノイズを付加した場合)

以上の結果から、回転の変化に対して耐性があるのはSAD、耐性がないのはISCであることがわかった。

まとめ

倍率の変化においてはSAD・NCCが耐性があり、ISCは耐性がないことがわかった。また、回転の変化においてはSADが耐性があり、ISCは耐性がないことがわかった。

今後の課題としては、

が挙げられる。

参考文献

外部での発表

本研究は、情報処理学会第73回全国大会(2011年)において「テンプレートマッチング法のパターンの変形に対する耐性の実験的評価」というタイトルで発表しました。

更新履歴

2012/02/22 外部発表情報を更新

2010/04/14 卒業研究ページ完成


添付ファイル: file実験画像2.jpg 929件 [詳細] file回転0-2.jpg 915件 [詳細] file倍率0-0.jpg 965件 [詳細] fileチャート.jpg 1062件 [詳細] file回転0-0.jpg 937件 [詳細] file回転0-32.jpg 944件 [詳細] fileテンプレートマッチング.jpg 1122件 [詳細] file倍率0-32.jpg 927件 [詳細] file実験画像1.jpg 1019件 [詳細] file回転0-8.jpg 885件 [詳細] file倍率0-2.jpg 907件 [詳細] file判定値.jpg 964件 [詳細] file倍率.jpg 924件 [詳細] file回転.jpg 963件 [詳細] file倍率0-8.jpg 897件 [詳細]

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Last-modified: 2023-05-11 (木) 13:20:22