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防犯カメラを用いた低解像度のナンバープレートの数字識別†
はじめに†
犯罪捜査において, 防犯カメラに写った不審車両のナンバープレートを認識することは大変重要である.しかし, 一般的に使用されている防犯カメラの解像度は低く,
ナンバープレートのような撮影領域が小さいものを目視で読み取るのは容易ではない.そのため, 低解像度のナンバープレート画像を識別する研究が盛んに行われている.
今回, 犯罪に関与した車を撮影したカメラが犯罪後も使用できる点に着目した.ナンバープレートは0から9の10種類の数字から構成されている.また,
どんな車両のナンバープレートも数字の形は同じである.このことから, 犯罪後に防犯カメラでこれらの10 種類の
数字を撮影し,識別したい画像を比較することでナンバープレートの識別が可能であると考える.
本研究では, 防犯カメラの画像を用いて,低解像度のナンバープレートの数字識別を行う手法を提案する.
本手法の説明†
処理の流れ†
図1 本手法の処理の流れ
- 不審車両が映っている画像が与えられる
- (1) の画像から数字が書かれているであろう箇所を切り抜く、これを入力画像とする
- (1) の映像を撮影したカメラを用いて,リファレンスプレートを少しずつずらしながら撮影
- 文字テンプレートの作成(各文字につき、複数枚の文字テンプレート)
- 画像間の類似性の比較・数字識別
文字テンプレートの作成†
実際のナンバープレートと同じフォントを用いた,0~9の書かれた10枚のプレートを準備.これを今後リファレンスプレートと呼ぶ.
リファレンスプレートを検証したい画像に映っている不審車両と同じ向き・同じ位置になるように設置し, 向きと位置を少しずつ変えて撮影する。
これを10枚のリファレンスプレートでおこなう.
リファレンスプレートを複数枚撮影する理由†
- リファレンスプレートとカメラの距離が遠いため, ナンバープレートの数字の形に比べてサンプリング間隔が粗くなる
- サンプリング間隔が粗いと, 左図のように数字パターンのどの位置にサンプリング位置があたるかで得られる画像が変化してしまう
以上のことから・・・・・・
リファレンスプレートを一度だけ撮影した場合, そこから得られる文字テンプレートと入力画像を比較した時に同じ数字だとしても画像パターンが異なることで一致しない可能性がある.
そのため, 複数枚の文字テンプレートを作成することで, どれかひとつは不審車両のナンバープレート画像と似たような画像が得られるのではないかと考え, 複数枚作成.
類似性の比較†
入力画像が 0 ~ 9 のどの数字と似ているかを求める方法としてテンプレートマッチングを用いる.
テンプレートマッチングとは, 入力画像とテンプレート画像を重ね合わせることにより比較照合し, 判定する処理である.
今回, 入力画像と文字テンプレートに比較には正規化相互相関を用いた.
- 正規化相互相関
- 画像の明るさの変動があっても安定的に類似度を計算することができる
- 類似度:どのくらい似ているか?を表す評価値であり、範囲は-1≦ 類似度 ≦1である
- 類似度が1に近いほど、2つの画像は似ている
ナンバープレートの数字識別†
図2 ナンバープレートの数字識別の方法
- 推定対象である入力画像と文字テンプレートの類似度を計算する. 類似度の算出には正規化相互相関を用いる.
- 文字テンプレートは各文字において複数枚あるので, 各文字系列において複数個の類似度が得られることとなる. ⇒ この類似度の最大値をその文字系列の類似度とする.
- 各文字系列の類似度を比較し, このなかで最大値を与える文字テンプレートの数字を選び, それを入力画像の数字と判定する.
実験*理想環境で実験†
実験装置
- 土台にカメラと自動ステージを固定(図3参照)
- カメラと推定対象の画像&リファレンスプレートの距離一定
- プレートは8cm四方、数字は2mm×3mm
図3 実験装置 | 図4 撮影画像 |
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実験方法
- ステージに数字が書かれた紙を貼り付けて撮影.
- 横軸に0.1mmずつ0.8mm移動, 縦軸も0.1mmずつ0.8mm移動させ撮影することで,81枚の画像が得られる.
- ステージを元の位置にもどす ⇒ 0から9の10種類で撮影.
- 数字と思われる個所を切り抜く ⇒ 入力画像作成(文字テンプレート作成)
数字1文字に対する文字認識の精度を示す.
- "第一候補以内"とは, ナンバープレートの書かれている文字を0から9の10通りの可能性のうち, 1つに絞った場合それが正解(正しく文字認識) している割合である.
- "第二候補以内"とは, 2つに絞った場合, その2つのなかに正解がある割合である.
- "第三候補以内"とは, 3つに絞った場合, その3つのなかに正解がある割合である.
ステージとカメラの距離 62cm†
- 入力画像:4×7 画素
- 文字テンプレート:6×9 画素
すべての数字で正しく文字認識できた.
ステージとカメラの距離 65cm†
- 入力画像:4×5 画素
- 文字テンプレート:6×7 画素
正しく文字認識できないことがあった. しかし,第三候補以内に約9割の正解が含まれている
実験*実環境で実験†
実際に自動車に推定したいナンバープレートを貼り付け提案手法で文字認識ができるかどうか確かめる.
実験環境
- 大学構内の2箇所で撮影(それぞれ別の日時)
- 推定したいナンバープレートを自動車に貼り付けて撮影 ⇒ 数字の書かれている箇所を切り抜き入力画像とする
- リファレンスプレートを自動車に貼り付け, 少しずつ動かしながら撮影⇒ 数字の書かれている箇所を切り抜き文字テンプレートとする
- 入力画像:4×7 画素
- 文字テンプレート:6×9 画素(0~9の数字を各268枚)
使用したナンバープレート†
図5 リファレンスプレート | 図6 推定したいナンバープレート |
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大学構内2か所でおこなった実験のまとめ. 結果は0から9のそれぞれの数字の文字認識率
- 第3候補以内に, 約9割の正解が含まれている.
- ナンバープレートの数字を4桁とすると, 10000通りの可能性から,81通りまで絞ることができる.
- 犯罪捜査のうえでは, 一意に決められなくても,ナンバープレートに書かれている数字の可能性を狭められる.
まとめ・今後の課題†
防犯カメラで撮影された低解像度のナンバープレートの数字を判別するという問題に対して,
- 実際のカメラで、可能性のある数字を撮影し、推定画像との類似度を評価する手法を提案
- 理想環境および実環境で実験をおこない提案手法の検証
- ナンバープレートの数字を一意は決めることはできなかったが、書かれている可能性のある数字をしぼることはできた
今後の課題は
- 文字テンプレートの作成の自動化⇒自動化をすることで, より迅速に文字認識をおこなうことができる
- 天候や照明条件が異なるときの文字認識率の検証